「米国でAIビジネスを展開したいが、州ごとに規制が違うと聞いた……」
——そんな相談が増えています。
2026年1月、米国ではAI規制を巡る連邦政府と州政府の対立が激化しています。38州が独自のAI法を制定する一方、連邦政府は「規制の分断がイノベーションを阻害する」として是正に動き出しました。
この攻防は、日本企業の米国進出だけでなく、日本国内のAI規制設計にも重要な示唆を与えます。
何が起きているのか
38州が独自AI法を制定
米国って、連邦法で統一されてないんですか?
そこが米国の特徴です。AIに関しては連邦レベルの包括的な法律がなく、各州が独自に規制を作っている状態。2025年だけで38州がAI関連の法律を成立させました。
2026年1月に発効した主な州法:
- カリフォルニア州TFAIA(テキサス州責任AIガバナンス法)
- テキサス州RAIGA(責任AI統治法)
- コロラド州AI法(ただし施行は6月30日に延期)
連邦政府の「介入」
2025年12月、連邦政府は大統領令を発令し、州のAI法への介入を示唆しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 「負担の大きい」州法の是正 |
| 期限 | 2026年3月11日までに介入対象を特定 |
| 担当 | 商務長官 |
| 除外 | 児童保護、データセンター、政府調達 |
「規制の分断は、企業にコンプライアンスコストを強い、イノベーションを阻害する」——これが連邦政府の立場です。統一基準を設けることで、米国のAI競争力を維持したいという意図があります。
なぜ対立が起きているのか
州の立場:消費者保護
なぜ州は独自の規制を作りたがるんですか?
州政府は「住民の保護」を最優先に考えます。AIによる差別、プライバシー侵害、雇用への影響——これらに対して、連邦の対応を待っていられないという判断です。
州が懸念するAIリスク:
- 採用AIによる差別的判断
- 顔認識技術の乱用
- ディープフェイクによる詐欺
- 自動決定システムの透明性欠如
連邦の立場:イノベーション優先
一方、連邦政府と産業界は「規制の分断」による弊害を強調します。
企業側の負担って、そんなに大きいんですか?
50州で異なる規制に対応するのは、現実的に不可能に近いです。カリフォルニア向けのAIモデル、テキサス向けのAIモデル……と分けて開発するわけにはいきません。結果として、「最も厳しい州の基準に全国で合わせる」か「その州でのサービス提供を諦める」かの二択になってしまいます。
連邦政府は司法長官の下にAI訴訟タスクフォースを設置。州法が連邦政策と矛盾する場合、法廷で争う姿勢を明確にしています。
日本企業への影響
米国進出時のリスク
日本企業が米国でAIサービスを展開する場合、どうすればいいんですか?
正直、今は難しい時期です。3月の連邦政府の判断を待つか、最も厳しい規制(現状はカリフォルニア)を基準に設計するか——どちらかになるでしょう。
日本企業がとるべきアクション:
- カリフォルニア州TFAIAの内容を理解する
- 社内のAIガバナンス体制を整備
- 規制動向を継続的にモニタリング
- 現地法務チームとの連携強化
日本国内への示唆
米国の混乱は、日本の規制設計にも教訓を与えます。
| 米国の課題 | 日本への示唆 |
|---|---|
| 規制の分断 | 国内統一基準の重要性 |
| 州ごとの対応コスト | 企業負担を考慮した設計 |
| イノベーション vs 保護 | バランスの取れた規制 |
日本は最初から国レベルで設計できるから、有利ですね。
その通りです。日本政府が2025年12月に策定した「AI基本計画」は、まさにこの教訓を踏まえています。統一的な基準を最初から設けることで、企業の予見可能性を高める——米国の混乱を他山の石にできる立場です。
今後の展望
3月11日が転換点
2026年3月11日、商務長官は「負担の大きい州法」のリストを公表する予定です。
考えられるシナリオ:
- シナリオA:連邦が積極介入→州法の多くが無効化
- シナリオB:限定的介入→主要州法は維持
- シナリオC:法廷闘争→数年間の不確実性継続
不確実性が続く中でも、AIガバナンス体制の整備は無駄になりません。どの規制が残っても、「説明可能性」「公平性」「透明性」の原則は共通です。今のうちに体制を作っておくことをおすすめします。
まとめ
米国AI規制を巡る連邦vs州の対立、ポイントをまとめます。
現状:
- 38州が独自のAI法を制定
- 連邦政府は「規制の分断」是正に動く
- 2026年3月11日が転換点
日本企業への影響:
- 米国進出時の法務リスク増大
- 不確実性の中での経営判断が必要
- AIガバナンス体制の整備は先行投資
日本への示唆:
- 統一基準の重要性
- 企業負担を考慮した規制設計
- イノベーションと保護のバランス
規制の不確実性は、リスクであると同時にチャンスでもあります。先行して体制を整えた企業は、規制が固まった時に競争優位を得られるでしょう。
よくある質問(記事のおさらい)
2025年に38州がAI関連の法律を成立させました。カリフォルニア州TFAIAやテキサス州RAIGAなどが2026年1月に発効しています。
「規制の分断がイノベーションを阻害する」という理由です。企業が州ごとに異なる対応を迫られることで、コンプライアンスコストが増大し、米国のAI競争力が低下することを懸念しています。
現状は規制動向が不透明なため、最も厳しいカリフォルニア州の基準を参考に設計するか、2026年3月の連邦判断を待つかの判断が必要です。いずれにせよ、AIガバナンス体制の整備は先行して進めるべきです。
2026年3月11日に商務長官が「負担の大きい州法」のリストを公表する予定です。この発表により、連邦が積極介入するか限定的にとどまるかが明らかになります。