ChatGPTやClaudeは素晴らしいAIですが、API利用料がかかり、データも外部サーバーに送信されます。
「自社サーバーでAIを動かしたい」「APIコストを削減したい」——そんなニーズに応えるのがオープンソースLLMです。
この記事では、急速に進化するオープンソースLLMの世界を解説します。
オープンソースLLMとは?
一言で言うと
オープンソースLLMは、モデルの重み(パラメータ)が公開されており、誰でも無料でダウンロード・利用できる大規模言語モデルです。
多くのモデルは商用利用も可能で、自社のサーバーやPCで動かすことができます。
ChatGPTとは何が違うんですか?
ChatGPT(GPT-4など)はクローズドソースで、APIを通じてのみ利用可能です。オープンソースLLMは、モデル自体をダウンロードして自分の環境で動かせます。データを外部に送らずに済むのが大きなメリットです。
クローズドソース vs オープンソース
| 項目 | クローズドソース | オープンソース |
|---|---|---|
| 代表例 | GPT-4、Claude、Gemini | Llama、Qwen、Mistral |
| 利用方法 | API経由のみ | ダウンロードして自環境で実行 |
| コスト | 従量課金(API料金) | 無料(インフラコストのみ) |
| データ | 外部サーバーに送信 | 自社内で完結可能 |
| カスタマイズ | 制限あり | ファインチューニング可能 |
| 性能 | 最高水準 | 急速に追いつき中 |
主要なオープンソースLLM
1. Llama(Meta)
Metaが開発する最も有名なオープンソースLLM。
特徴
- 8B、70B、405Bのパラメータサイズを展開
- Llama 3.3(2024年12月)で70Bながら405B級の性能を実現
- Llama 4(2025年4月)でマルチモーダル対応
- 商用利用可能(7億ユーザー以上のサービスは制限あり)
| バージョン | 公開時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| Llama 2 | 2023年7月 | 商用利用可能に |
| Llama 3 | 2024年4月 | 性能大幅向上 |
| Llama 3.1 | 2024年7月 | 128Kコンテキスト |
| Llama 3.2 | 2024年9月 | マルチモーダル対応 |
| Llama 3.3 | 2024年12月 | 70Bで405B級性能 |
| Llama 4 | 2025年4月 | 1000万トークン対応 |
2. Qwen(Alibaba Cloud)
Alibaba Cloudが開発。多言語対応に優れる。
特徴
- 29以上の言語をサポート
- 0.5B〜235Bまで幅広いサイズ展開
- Apache 2.0ライセンス(完全な商用利用可能)
- Qwen3(2025年)でハイブリッド推論機能搭載
- コーディング特化版「Qwen Coder」も提供
日本語は得意なんですか?
Qwenは多言語モデルとして設計されており、日本語もかなり得意です。中国語だけでなく、日本語、韓国語、英語など幅広い言語で高い性能を発揮します。
3. Mistral AI(フランス)
フランスのスタートアップが開発。効率性に優れる。
特徴
- MoE(Mixture of Experts)アーキテクチャを活用
- Mixtral 8x7B:46.7Bパラメータ中12.9Bのみ使用で効率的
- Mixtral 8x22B:141Bパラメータ中39Bのみアクティブ
- Mistral Small:24Bパラメータで高性能
- Apache 2.0ライセンス(多くのモデル)
4. DeepSeek(中国)
中国のAI研究所が開発。推論能力に優れる。
特徴
- DeepSeek-V3:671Bパラメータの超大規模モデル
- DeepSeek-R1:Chain of Thought推論に特化
- コストパフォーマンスが非常に高い
- 蒸留版(Llama/Qwenベース)も提供
5. Gemma(Google)
Googleが開発する軽量オープンソースモデル。
特徴
- 2B、7B、9Bなど軽量サイズ中心
- エッジデバイスでの動作を想定
- Geminiの技術を活用
- 研究・教育目的に最適
6. 日本語特化モデル
ELYZA-japanese-Llama-2
- Llama 2ベースの日本語特化モデル
- 商用利用可能
LLM-jp-3
- 国立情報学研究所が開発
- 1.8B〜172Bのサイズ展開
PLaMo
- Preferred Elementsがフルスクラッチ開発
- 外部ライセンス制約なし
モデル性能比較
ベンチマーク比較(2025年時点)
| モデル | パラメータ | 総合性能 | コーディング | 多言語 |
|---|---|---|---|---|
| Llama 3.3 70B | 70B | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
| Qwen3 235B | 235B | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| Mixtral 8x22B | 141B(39B) | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
| DeepSeek-V3 | 671B | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| Gemma 2 9B | 9B | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
用途別おすすめ
| 用途 | おすすめモデル |
|---|---|
| 汎用チャット | Llama 3.3 70B、Qwen3 |
| コーディング | DeepSeek Coder、Qwen Coder |
| 多言語対応 | Qwen3(29言語以上) |
| 長文処理(RAG) | Llama 3.1(128K)、Qwen2 |
| エッジ/軽量 | Gemma 2 9B、Mistral Small |
| 推論特化 | DeepSeek-R1 |
オープンソースLLMの動かし方
1. クラウドAPI
オープンソースLLMをAPIとして提供するサービスを利用。
- Together AI
- Fireworks AI
- Groq(超高速推論)
- Replicate
2. ローカル実行
自分のPC/サーバーで動かす。
必要スペック(目安)
| モデルサイズ | 必要VRAM | 対応GPU例 |
|---|---|---|
| 7B(4bit) | 6GB | RTX 3060 |
| 13B(4bit) | 10GB | RTX 3080 |
| 70B(4bit) | 40GB | A100 40GB |
| 70B(8bit) | 80GB | A100 80GB |
主要ツール
- Ollama:最も簡単にローカルLLMを動かせる
- LM Studio:GUIで簡単操作
- vLLM:高速推論エンジン
- llama.cpp:CPU実行も可能
3. Ollama使用例
# Ollamaインストール後
ollama run llama3.3
# チャット開始
>>> こんにちは!
わずか1コマンドでLlama 3.3が動作します。
オープンソースLLMのメリット
1. コスト削減
APIの従量課金が不要。初期投資(GPU)のみで運用可能。
【コスト比較(月100万リクエストの場合)】
- クローズドAPI:数十万円〜数百万円/月
- オープンソース:インフラ費用のみ(固定)
2. データプライバシー
機密データを外部に送信せず、自社内で処理完結。
3. カスタマイズ
LoRAなどでファインチューニングし、自社業務に最適化可能。
4. ベンダーロックイン回避
特定のAPIに依存せず、モデルを自由に切り替え可能。
5. オフライン利用
インターネット接続なしでも動作。
オープンソースLLMの注意点
1. インフラの準備
高性能なGPUサーバーが必要。初期投資やクラウド利用料がかかる。
2. 運用・保守
モデルのアップデート、セキュリティ管理を自社で行う必要あり。
3. 性能差
最新のクローズドモデル(GPT-4o、Claude 3.5など)には若干及ばないケースも。
4. ライセンス確認
モデルによってライセンスが異なる。商用利用の可否を必ず確認。
「オープンソース」でも商用利用に制限があるモデルがあります。Apache 2.0やMITライセンスは制限が少なく安心。Llama系は大規模サービスに制限があるため要確認。
2025年の動向
オープンソースの躍進
2024〜2025年にかけて、オープンソースLLMはクローズドソースに急速に追いついています。
- DeepSeek-R1がOpenAI o1に匹敵する推論性能を達成
- Llama 3.3 70BがGPT-4oと同等のベンチマーク
- Qwen3がClaude Sonnetに迫る性能
MoE(Mixture of Experts)の普及
効率的なMoEアーキテクチャが主流に。全パラメータの一部のみを使用し、高速かつ高性能を実現。
ローカルLLMの普及
Ollamaなどのツール進化により、個人PCでも高性能LLMが動作可能に。
オープンソースLLMは「AIの民主化」を推進しています。大企業だけでなく、中小企業や個人開発者も高性能AIを活用できる時代になりました。
まとめ:AI民主化の最前線
オープンソースLLMは、誰でも利用できる高性能AIを実現する重要な技術です。
オープンソースLLMの重要ポイント:
- モデルをダウンロードして自環境で実行可能
- Llama、Qwen、Mistral、DeepSeekが主要プレイヤー
- 商用利用可能なモデルが多数(ライセンス確認必須)
- APIコスト削減、データプライバシー確保に有効
- ファインチューニングで自社業務に最適化可能
- クローズドソースに急速に追いつき中
- Ollamaなどで簡単にローカル実行可能
「AIを使う」から「AIを持つ」時代へ——オープンソースLLMがその扉を開いています。