「AIに画像を見せて質問する」「AIに音声で話しかける」——かつてはSFの世界でした。
しかし2025年、マルチモーダルAIは当たり前の技術になりつつあります。
マルチモーダルAIとは
マルチモーダルって、難しそうな言葉ですね...
「マルチ」は複数、「モーダル」は感覚や形式のことです。つまり、テキスト・画像・音声・動画など、複数の形式のデータを同時に扱えるAIのことです。
定義
マルチモーダルAI(Multimodal AI)とは、複数の種類のデータ(テキスト、画像、音声、動画など)を統合して処理・理解できる機械学習モデルです。従来の「テキストだけ」「画像だけ」のAIとは異なり、人間のように複数の感覚を組み合わせて判断できます。
従来のAIとの違い
| 特徴 | 従来のAI | マルチモーダルAI |
|---|---|---|
| 入力 | 単一形式 | 複数形式 |
| 処理 | 専門特化 | 統合的 |
| 出力 | 単一形式 | 複数形式可能 |
| 例 | テキストのみ回答 | 画像+テキストで回答 |
マルチモーダルAIの市場規模
急成長する市場
マルチモーダルAIって、どれくらい普及しているんですか?
急成長中です。Global Market Insightsによると、2024年に16億ドル規模だった市場が、2034年には年率32.7%で成長すると予測されています。
- 2024年:16億ドル
- 2027年:生成AIソリューションの40%がマルチモーダル化(Gartner予測)
- 成長率:年32.7%(2034年まで)
- ※2023年時点では、生成AIのわずか1%がマルチモーダル
代表的なマルチモーダルAI
GPT-4o(OpenAI)
GPT-4oの「o」は「omni(すべて)」を意味します。
- テキスト入力・出力
- 画像の理解と説明
- 音声の認識と生成
- 動画の内容理解
Gemini(Google)
GoogleのGeminiシリーズは、最初からマルチモーダルを前提に設計されています。
| 対応形式 | 内容 |
|---|---|
| テキスト | 自然言語処理 |
| 画像 | 理解・生成 |
| 音声 | 認識・生成 |
| コード | 理解・生成 |
| 動画 | 内容理解 |
Geminiは最大100万トークンのコンテキストウィンドウを持ち、長い動画や大量のドキュメントを一度に処理できます。
Claude(Anthropic)
Claudeもマルチモーダル対応ですが、特徴的なのはドキュメントや画像の分析に強い点です。
Claudeは画像生成機能は持っていませんが、グラフや図表の分析、ドキュメント内の画像理解に優れています。ビジネス文書の処理に向いていますね。
その他の注目モデル
| モデル | 開発元 | 特徴 |
|---|---|---|
| ImageBind | Meta | 6種類のデータ形式を統合 |
| HunyuanCustom | Tencent | 動画生成に特化 |
| Grok 4 | xAI | 音声・画像対応を拡大中 |
マルチモーダルAIの仕組み
なぜ複数形式を扱えるのか
どうやってテキストも画像も同時に理解できるんですか?
キーワードは「共有表現空間」です。テキスト、画像、音声を、すべて同じ「数値ベクトル」の形式に変換します。すると、異なる形式のデータを同じ空間で比較・処理できるようになるんです。
- 各モダリティ(テキスト、画像など)を専用のエンコーダーで処理
- すべてを共通の「埋め込みベクトル」に変換
- 統合されたトランスフォーマーモデルで推論
- 必要に応じて複数形式で出力
従来のアプローチとの違い
従来は「テキストAI」と「画像AI」を別々に開発し、連携させていました。
| アプローチ | 従来 | マルチモーダル |
|---|---|---|
| モデル構成 | 複数を連携 | 単一で統合 |
| 情報のロス | 連携時に発生 | 最小限 |
| 処理速度 | 遅い | 速い |
| 精度 | やや低い | 高い |
実際の活用事例
ヘルスケア
- X線画像 + 患者の症状テキスト → 診断支援
- 音声による問診 + 検査データ → 総合判断
- 医療文書の自動要約と画像の関連付け
カスタマーサポート
ビジネスではどう使われているんですか?
例えば、お客様が「この画面でエラーが出ました」とスクリーンショットを送ってきたとします。マルチモーダルAIなら、画像を見て状況を理解し、テキストで解決策を提案できます。
教育
- 講義動画 + スライド + テキスト教材の統合分析
- 学生の質問に対し、図解と説明を組み合わせて回答
- 音声講義の自動文字起こし + 要約
自動運転
自動運転車は、カメラ映像、LiDARデータ、音声(クラクションなど)を同時に処理する必要があります。マルチモーダルAIはこの分野で不可欠な技術です。
マルチモーダルAIの課題
計算コスト
何か問題点はありますか?
一番大きいのは計算コストです。テキストだけのAIより、はるかに多くの計算リソースが必要です。そのため、API料金も高くなりがちです。
その他の課題
- 計算コストの高さ:推論に必要なリソースが大きい
- ハルシネーション:画像の誤解釈による誤った説明
- バイアス:学習データの偏りが複数形式に影響
- プライバシー:画像や音声に含まれる個人情報の扱い
今後の展望
2026年以降の予測
- より軽量で高速なモデルの登場
- リアルタイム動画処理の普及
- エッジデバイス(スマホなど)での動作
- 五感すべてを扱うAIへの進化
2025年は「マルチモーダル元年」と言えるかもしれません。今後、AIは「見て、聞いて、話す」ことが当たり前になっていくでしょう。
まとめ
マルチモーダルAIについて、重要なポイントをまとめます。
- 定義:テキスト・画像・音声・動画など複数形式を統合処理できるAI
- 代表例:GPT-4o、Gemini、Claude
- 仕組み:異なる形式を共通のベクトル空間で処理
- 活用分野:医療、カスタマーサポート、教育、自動運転
- 課題:計算コスト、ハルシネーション、プライバシー
- 市場:2024年16億ドル → 年率32.7%で成長中
マルチモーダルAIは、AIが人間のように「複数の感覚を使って理解する」ための重要な進化です。今後のAI活用を考える上で、押さえておきたい技術です。