ChatGPTとGoogle Drive、ClaudeとSlack、GeminiとGitHub——AIと様々なツールを連携させたいとき、それぞれバラバラの実装が必要でした。
MCP(Model Context Protocol)は、この問題を解決するために生まれたオープンプロトコルです。
この記事では、AIエコシステムの新標準として急速に普及しているMCPについて解説します。
MCPとは?
一言で言うと
MCPは、LLM(大規模言語モデル)と外部ツール・データソースを、標準化された方法で接続するためのオープンプロトコルです。
Anthropicはこれを「AIアプリケーションのUSB-Cポート」と表現しています。USB-Cがあらゆるデバイスを統一規格で接続できるように、MCPはあらゆるAIアプリケーションとツールを標準的な方法で接続します。
Function Callingとは何が違うんですか?
Function Callingは各LLMベンダーが個別に実装している機能です。MCPはそれを標準化し、「一度作ったツール連携を、どのLLMでも使い回せる」ようにするオープンプロトコルです。
MCPが解決する問題
従来、AIと外部ツールを連携させるには「M×N問題」がありました。
【従来の問題:M×N問題】
M個のAIモデル × N個のツール = M×N個のカスタム実装
例:3つのLLM × 5つのツール = 15個の個別実装が必要
MCPはこれを「M+N問題」に変えます。
【MCPによる解決:M+N問題】
M個のAIモデル + N個のMCPサーバー = M+N個の実装で済む
例:3つのLLM + 5つのMCPサーバー = 8個の実装で済む
MCPの歴史と普及
急速な普及
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年11月 | Anthropicがオープンソースとして公開 |
| 2025年2月 | 1,000以上のMCPサーバーが開発される |
| 2025年3月 | OpenAIがMCPの採用を発表 |
| 2025年4月 | GoogleもGeminiでのサポートを表明 |
| 2025年現在 | 16,000以上のMCPサーバーが存在 |
わずか半年で、MCPは業界標準として認められる存在になりました。
採用企業・サービス
LLMプロバイダー
- Anthropic(Claude)
- OpenAI(ChatGPT)
- Google(Gemini)
開発ツール
- Microsoft(VS Code、Copilot Studio)
- Replit
- Codeium
- Sourcegraph
- Zed
エンタープライズ
- Block(旧Square)
- Apollo
MCPの仕組み
アーキテクチャ
MCPはクライアント-サーバー型のアーキテクチャを採用しています。
┌─────────────────┐ ┌─────────────────┐
│ MCPクライアント │ │ MCPサーバー │
│ (AIアプリ側) │ ←→ │ (ツール側) │
│ │ │ │
│ Claude Desktop │ │ GitHub サーバー │
│ VS Code │ │ Slack サーバー │
│ カスタムアプリ │ │ DB サーバー │
└─────────────────┘ └─────────────────┘
↑ ↑
└───── JSON-RPC 2.0 ────┘
通信プロトコル
MCPはJSON-RPC 2.0に基づいて通信します。トランスポート層として以下をサポート:
- stdio:標準入出力(ローカル実行向け)
- HTTP + SSE:Webベースの通信(リモート実行向け)
MCPサーバーが公開する要素
MCPサーバーは主に3種類の要素を公開します。
1. Tools(ツール)
外部機能を呼び出すための定義。
{
"name": "send_slack_message",
"description": "Slackにメッセージを送信します",
"parameters": {
"channel": "送信先チャンネル",
"message": "メッセージ内容"
}
}
2. Resources(リソース)
LLMのコンテキストとして提供できるデータ。
- ドキュメントの内容
- データベースのスキーマ
- ファイルの中身
3. Prompts(プロンプト)
特定タスク用のプロンプトテンプレート。
"code_review": "以下のコードをレビューし、改善点を指摘してください: {code}"
MCPの使い方
対応クライアント
Claude Desktop
最も簡単にMCPを試せる環境です。設定ファイルにMCPサーバーを追加するだけで利用可能。
VS Code
GitHub Copilotのエージェントモードと統合されています。
カスタムアプリケーション
Python、TypeScript、C#、JavaのSDKが提供されています。
公式MCPサーバー
Anthropicが提供する構築済みサーバー:
| サーバー | 機能 |
|---|---|
| filesystem | ローカルファイルの読み書き |
| github | GitHubリポジトリ操作 |
| slack | Slackメッセージ送受信 |
| google-drive | Googleドライブ操作 |
| postgres | PostgreSQLデータベース接続 |
| puppeteer | ブラウザ自動操作 |
設定例(Claude Desktop)
{
"mcpServers": {
"filesystem": {
"command": "npx",
"args": [
"-y",
"@modelcontextprotocol/server-filesystem",
"/path/to/allowed/directory"
]
}
}
}
この設定だけで、Claudeがローカルファイルを参照できるようになります。
MCPのメリット
1. 標準化による再利用性
一度作ったMCPサーバーは、Claude、ChatGPT、Geminiなど、どのLLMからも利用可能。
2. オープンソース
MITライセンスで公開されており、自由にカスタマイズ・拡張が可能。
3. セキュリティ
ツールごとにアクセス権限を細かく制御できます。
4. 豊富なエコシステム
16,000以上のMCPサーバーが既に存在し、多くのユースケースに対応。
5. 自然言語での操作
複雑なAPIを意識せず、自然言語でツールを操作できます。
セキュリティ面は大丈夫なんですか?
2025年4月にセキュリティ研究者から指摘があり、プロンプトインジェクションやツール権限の問題が報告されました。2025年6月のアップデートでOAuth認証の強化など対策が進んでいますが、企業利用では慎重な権限設定が必要です。
MCP vs Function Calling
| 項目 | MCP | Function Calling |
|---|---|---|
| 標準化 | オープン標準 | ベンダー固有 |
| 再利用性 | 異なるLLMで共用可能 | 各LLM用に実装が必要 |
| エコシステム | 16,000+サーバー | 個別実装 |
| 設定方法 | 宣言的(設定ファイル) | 命令的(コード) |
| 対応範囲 | ツール+リソース+プロンプト | 主にツール |
MCPの実践例
開発ワークフロー
ユーザー:「GitHub上のこのリポジトリのREADMEを更新して」
↓ Claude(MCPクライアント)→ GitHub MCPサーバー
- リポジトリの内容を取得
- README.mdを読み込み
- 更新内容を生成
- プルリクエストを作成
↓ 結果:「READMEを更新するプルリクエストを作成しました」
データ分析ワークフロー
ユーザー:「先月の売上データをSlackで共有して」
↓ Claude
- Postgres MCPサーバー → 売上データ取得
- データ分析・サマリー作成
- Slack MCPサーバー → 結果を投稿
↓ 結果:「先月の売上サマリーを#salesチャンネルに投稿しました」
今後の展望
A2Aプロトコルとの関係
2025年4月、GoogleはA2A(Agent-to-Agent)プロトコルを発表しました。
- MCP:AIとツールの接続
- A2A:AI同士の連携
両者は補完関係にあり、MCPがツール連携の標準、A2Aがエージェント間通信の標準として共存する可能性があります。
AIエージェントの基盤
MCPは、複数のツールを組み合わせて複雑なタスクを実行する「AIエージェント」の基盤技術として発展しています。
【AIエージェントの構成】
LLM(頭脳) ↓ MCP ↓ ツール群(手足)
- ファイル操作
- DB操作
- API呼び出し
- ブラウザ操作
MCPは、AIを「知識を持つ存在」から「実際に行動できる存在」へと進化させる重要なインフラです。2025年以降、AIアプリケーション開発の標準として定着していくでしょう。
まとめ:AIエコシステムの新標準
MCPは、AIと外部ツールを接続するためのオープンプロトコルです。
MCPの重要ポイント:
- Anthropicが2024年11月に公開したオープン標準
- 「AIアプリのUSB-Cポート」として標準化を推進
- OpenAI、Googleも採用し業界標準に
- クライアント-サーバー型、JSON-RPC 2.0ベース
- Tools、Resources、Promptsの3種類を提供
- 16,000以上のMCPサーバーが既に存在
- AIエージェント開発の基盤技術として発展中
MCPにより、AIは単なる「チャット相手」から、実際に仕事をこなす「デジタルワーカー」へと進化しています。