AI
AI INSIGHT 経営課題をAIで解決|経営者のためのAIメディア
エンベディング(Embedding)とは?AIが「意味」を理解する仕組みを解説
AI用語解説

エンベディング(Embedding)とは?AIが「意味」を理解する仕組みを解説

2025-11-18
2025-12-10 更新

「犬」と「ワンちゃん」が同じ意味だと、AIはどうやって理解しているのでしょうか?その秘密が「エンベディング」です。RAGやセマンティック検索の基礎となるこの技術、わかりやすく解説します。

「返金ポリシーを教えて」と「お金を返してもらう方法は?」——この2つの質問は、言葉は違いますが意味は同じですよね。

人間にとっては当たり前のことですが、AIがこれを理解できるのは「エンベディング(Embedding)」という技術のおかげです。

この記事では、AIが「意味」を理解する仕組みであるエンベディングについて、わかりやすく解説します。

エンベディングとは?言葉を「数字」に変換する技術

一言で言うと

エンベディングとは、テキストや画像などのデータを、AIが計算できる「数字の列(ベクトル)」に変換する技術です。

例えば「犬」という単語は、以下のような数字の列に変換されます:

[0.25, -0.14, 0.89, 0.03, -0.67, ...](数百〜数千次元)

この数字の列を「ベクトル」と呼びます。

読者
読者

なぜわざわざ数字に変換するんですか?

吉村(AIコンサルタント)
吉村(AIコンサルタント)

コンピュータは「言葉」をそのまま理解できないからです。数字に変換することで、「似ている」「違う」といった比較計算ができるようになります。

似た意味の言葉は「近く」に配置される

エンベディングの最大の特徴は、意味が似ている言葉は、ベクトル空間で「近く」に配置されることです。

単語ペア ベクトル空間での距離
犬 - ワンちゃん 非常に近い
犬 - 猫 やや近い(どちらもペット)
犬 - 車 遠い

「king(王)」と「queen(女王)」は近くに、「king」と「banana(バナナ)」は遠くに配置されます。これにより、AIは「意味の近さ」を計算できるのです。

エンベディングが使われる場面

1. セマンティック検索(意味検索)

従来のキーワード検索は、完全一致でしか結果を返せませんでした。

  • 検索:「スマホの返金方法」
  • 従来:「返金」「方法」を含むページのみヒット

エンベディングを使ったセマンティック検索では:

  • 検索:「スマホの返金方法」
  • セマンティック検索:「携帯電話の返品ポリシー」「モバイル端末の払い戻し手順」もヒット
ポイント

セマンティック検索は、言葉の「意味」を理解するため、表現が違っても関連する結果を見つけられます。

2. RAG(検索拡張生成)

RAGは、AIが外部の知識を参照して回答する技術です。

  1. 質問をエンベディングに変換
  2. データベースから意味的に近い文書を検索
  3. その文書を元にAIが回答を生成

社内文書の検索や、最新情報を反映した回答に活用されています。

3. レコメンデーション(おすすめ機能)

NetflixやSpotifyの「あなたへのおすすめ」も、エンベディングを活用しています。

  • ユーザーの視聴履歴をエンベディング化
  • 作品もエンベディング化
  • 「近い」作品をおすすめとして表示

4. 異常検知

正常なデータのエンベディングと比較して、「遠い」データを異常として検出します。クレジットカードの不正利用検知などに使われています。

エンベディングの仕組み

ステップ1:テキストをトークン化

まず、テキストをトークン(AIが処理する最小単位)に分割します。

「AIは便利です」 → ["AI", "は", "便利", "です"]

ステップ2:各トークンをベクトルに変換

各トークンを、学習済みモデルを使ってベクトルに変換します。

  • "AI" → [0.12, -0.34, 0.56, ...]
  • "は" → [0.01, 0.23, -0.11, ...]

ステップ3:文全体のベクトルを計算

文全体を表すベクトル(文エンベディング)を計算します。単純な平均から、高度な重み付けまで様々な方法があります。

読者
読者

ベクトルの次元数って、どれくらいあるんですか?

吉村
吉村

モデルによりますが、一般的には768次元(BERT)から1536次元(OpenAI)程度です。次元が多いほど細かいニュアンスを捉えられますが、計算コストも上がります。

主要なエンベディングモデル

OpenAI Embeddings

OpenAIが提供するエンベディングモデル。text-embedding-3-smallとtext-embedding-3-largeがあり、APIで簡単に利用できます。

Sentence-BERT

文全体のエンベディングに特化したモデル。オープンソースで、多くの言語に対応しています。

BERT Embeddings

Googleが開発したBERTを使ったエンベディング。文脈を考慮した高品質なベクトルを生成します。

モデル 次元数 特徴
OpenAI text-embedding-3-small 1536 手軽、API利用
OpenAI text-embedding-3-large 3072 高精度
Sentence-BERT 384-768 オープンソース
BERT (基本) 768 汎用的

ベクトルデータベースとの組み合わせ

エンベディングは「ベクトルデータベース」と組み合わせて使われることが多いです。

なぜベクトルデータベースが必要か?

数百万〜数十億のエンベディングを保存し、高速に「最も近いベクトル」を検索するには、専用のデータベースが必要です。

主要なベクトルデータベース

  • Pinecone:クラウドベースで使いやすい
  • Weaviate:オープンソース、スキーマ定義が柔軟
  • Milvus:大規模データに強い
  • FAISS(Facebook AI):高速な近似最近傍探索
注意

ベクトルデータベースは、従来のSQLデータベースとは異なる考え方で設計されています。「完全一致」ではなく「類似度」で検索するのが特徴です。

エンベディングの限界と注意点

1. 学習データに依存

エンベディングモデルは学習データに基づいています。学習データに含まれない専門用語や新語は、うまく表現できない可能性があります。

2. 言語による精度差

多くのモデルは英語で最も高い精度を発揮します。日本語などの非英語圏の言語では、精度が落ちることがあります。

3. 文脈の限界

単語レベルのエンベディングでは、文脈による意味の違い(例:「Apple」が会社か果物か)を捉えきれないことがあります。文エンベディングを使うことで改善できます。

吉村
吉村

専門分野では、汎用モデルをそのまま使うより、ドメイン特化のデータでファインチューニングすることをおすすめします。

まとめ:AIの「意味理解」を支えるエンベディング

エンベディングは、AIが言葉の「意味」を理解するための基盤技術です。

エンベディングの重要ポイント:

  • テキストを数字の列(ベクトル)に変換する技術
  • 意味が似ている言葉は、ベクトル空間で「近く」に配置される
  • セマンティック検索、RAG、レコメンデーションなどに活用
  • ベクトルデータベースと組み合わせて大規模データに対応
  • 言語やドメインによって精度が異なる

RAGやセマンティック検索の普及により、エンベディングの重要性はますます高まっています。AI活用を検討するなら、ぜひ押さえておきたい概念です。

Tags

エンベディング ベクトル セマンティック検索 RAG
吉村 この記事の筆者

吉村

AI INSIGHT

大学でIT教育に20年携わり、わかりやすい解説に定評あり。現在は合同会社四次元にてAI初心者向けの入門コンテンツを担当。

この記事をシェアする

記事一覧に戻る