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Chain of Thought(思考連鎖)とは?AIの推論を引き出すプロンプト技術を解説
AI用語解説

Chain of Thought(思考連鎖)とは?AIの推論を引き出すプロンプト技術を解説

2025-11-23
2025-12-10 更新

「Let's think step by step」——この一言でAIの正答率が劇的に上がる。Chain of Thought(CoT)は、AIに「考える過程」を言語化させることで、複雑な問題を解けるようにするプロンプト技術です。

「3つのリンゴがあり、2つ食べて、さらに5つもらいました。今いくつありますか?」

この問題、人間なら「3-2=1、1+5=6」と段階的に考えますよね。

AIも同じように「考える過程」を言語化させると、正解率が劇的に向上します。この技術がChain of Thought(CoT:思考連鎖)です。

この記事では、プロンプトエンジニアリングの重要技術「Chain of Thought」について解説します。

Chain of Thoughtとは?

一言で言うと

Chain of Thoughtは、AIに「答え」だけでなく「思考の過程」を出力させることで、推論能力を引き出すプロンプト技術です。

2022年にGoogle Researchが発表した論文で、大きな注目を集めました。

読者
読者

なぜ考える過程を出力させると、正解率が上がるんですか?

吉村(AIコンサルタント)
吉村(AIコンサルタント)

人間も難しい問題を解くとき、頭の中で整理しながら考えますよね。LLMも同様で、中間ステップを「言葉」として出力させることで、複雑な問題を分解して処理できるようになるんです。

従来のプロンプトとの違い

従来のプロンプト(直接回答)

質問:太郎は5個のリンゴを持っています。2個食べて、母から3個もらいました。何個ありますか?
回答:6個

Chain of Thoughtプロンプト

質問:太郎は5個のリンゴを持っています。2個食べて、母から3個もらいました。何個ありますか?
回答:まず、最初に5個のリンゴがあります。
2個食べたので、5 - 2 = 3個になります。
母から3個もらったので、3 + 3 = 6個になります。
答えは6個です。

思考過程を出力させることで、複雑な問題でも段階的に正解へ導けます。

Chain of Thoughtの仕組み

なぜ効果があるのか

LLMは「次に来るトークンを予測する」仕組みで動いています。

直接回答を求めると、複雑な計算を一度にしなければなりません。しかし、中間ステップを出力させると、各ステップの結果が「文脈」として残り、次のステップの推論を助けます。

直接回答の場合:問題 → 一気に回答を生成

CoTの場合:問題 → ステップ1 → ステップ2 → ステップ3 → 最終回答
(各ステップの結果が文脈として残り、次のステップの推論を補助)

効果が出るタスク

CoTは特に以下のタスクで効果を発揮します。

  • 算術推論:複数ステップの計算問題
  • 常識推論:日常的な状況についての推論
  • 記号推論:論理パズル、パターン認識
  • コード生成:複雑なアルゴリズムの実装
  • 計画立案:複数のステップが必要なタスク
効果が薄いケース

単純なタスク(事実の検索、簡単な分類など)では、CoTは効果が薄いか、むしろ精度が下がることもあります。問題の複雑さに応じて使い分けが重要です。

Chain of Thoughtの種類

1. Few-Shot CoT

「例」を示して、思考過程を学習させる方法です。

【プロンプト例】
質問:カフェで350円のコーヒーと280円のケーキを買いました。1000円払ったらお釣りはいくら?

回答:まず、コーヒーとケーキの合計を計算します。
350 + 280 = 630円です。
次に、お釣りを計算します。
1000 - 630 = 370円です。
答えは370円です。

質問:映画館で大人1800円、子供1000円のチケットを買いました。大人2人と子供1人で、5000円払うとお釣りはいくら?

回答:

このように「例」を見せると、AIは同じパターンで思考過程を出力します。

2. Zero-Shot CoT

例を示さず、「考えて」と指示するだけの方法です。

質問:[問題文]

一歩ずつ考えてください。(Let's think step by step.)

驚くべきことに、「Let's think step by step」と一言添えるだけで、正答率が大幅に向上することが研究で示されています。

方式 特徴 精度
直接回答 答えだけを出力 低〜中
Zero-Shot CoT 「考えて」と指示 中〜高
Few-Shot CoT 例を示す

3. Self-Consistency(自己一貫性)

同じ問題を複数回解かせ、最も多い回答を採用する方法です。

  • 1回目の推論 → 答え:A
  • 2回目の推論 → 答え:B
  • 3回目の推論 → 答え:A
  • 4回目の推論 → 答え:A
  • 5回目の推論 → 答え:B

最終回答:A(多数決)

Temperatureを高めに設定し、異なる推論パスを生成させます。

4. Tree of Thought(思考の木)

複数の推論パスを「木構造」で探索する発展形です。

[問題] から複数のパスに分岐:

  • パスA → A1、A2に分岐 → 各々評価
  • パスB → B1 → 評価
  • パスC → C1 → 評価

→ 最良のパスを選択

各ステップで複数の選択肢を検討し、最も有望なパスを選択します。

実践的な使い方

効果的なプロンプト例

数学の問題

以下の問題を、段階的に考えて解いてください。各ステップで計算過程を示してください。

問題:[問題文]

論理的な判断

以下の状況について、step by stepで分析してください。
まず前提条件を整理し、次に各選択肢のメリット・デメリットを検討し、最後に結論を出してください。

状況:[状況の説明]

コード生成

以下の機能を実装するコードを書いてください。
まず必要な処理を列挙し、各処理の実装方法を検討してから、コードを書いてください。

要件:[要件の説明]

日本語での表現例

  • 「一歩ずつ考えてください」
  • 「段階的に推論してください」
  • 「思考過程を示してください」
  • 「順を追って説明してください」
  • 「まず〜を考え、次に〜を検討してください」

2025年の最新動向

推論モデルの登場

2024年後半から2025年にかけて、「推論モデル」と呼ばれる新しいカテゴリのLLMが登場しました。

  • OpenAI o1/o3:内部で自動的にCoT的な推論を実行
  • DeepSeek R1:推論特化のオープンソースモデル
  • Claude:Extended Thinkingモードで長時間推論

これらのモデルは、明示的にCoTを指示しなくても、内部で「考える」プロセスを実行します。

CoTの効果は低下している?

2025年の研究では、興味深い結果が報告されています。

モデルタイプ CoTによる改善 処理時間増加
旧世代モデル 大きい(10%以上) 中程度
推論モデル わずか 20-80%増
読者
読者

推論モデルではCoTの効果が薄いんですか?

吉村
吉村

推論モデルは最初から「考える」ように訓練されているので、明示的なCoT指示の効果が小さくなっています。ただし、旧世代モデルや小規模モデルでは、依然としてCoTは有効な手法です。

マルチモーダルCoT

2024年以降、テキストだけでなく画像を含む問題でもCoTが活用されています。

マルチモーダルCoT】

  1. 画像から情報を抽出(視覚的分析)
  2. テキスト情報と統合(推論生成)
  3. 段階的に回答を導出(回答推論)

CoTを使うべきか?判断基準

使うべき場面

  • 複数ステップの計算や論理が必要
  • 複雑な判断や分析が求められる
  • 推論過程を確認したい
  • 非推論モデルを使用している

使わない方がいい場面

  • 単純な事実検索(「日本の首都は?」など)
  • シンプルな分類タスク
  • 推論モデル(o1など)を使用している
  • レスポンス速度が重要
吉村
吉村

CoTは「魔法の呪文」ではありません。タスクの複雑さ、使用モデル、速度要件などを考慮して、使い分けることが重要です。

まとめ:AIに「考えさせる」技術

Chain of Thoughtは、AIの推論能力を引き出す強力なプロンプト技術です。

Chain of Thoughtの重要ポイント:

  • AIに「思考過程」を出力させる技術
  • 複雑な推論タスクで精度が大幅向上
  • 「Let's think step by step」だけでも効果あり
  • Few-Shot、Zero-Shot、Self-Consistencyなどのバリエーション
  • 推論モデルでは効果が薄れる傾向
  • タスクの複雑さに応じて使い分けが重要

「考えて」と伝えるだけでAIが賢くなる——CoTは、プロンプトエンジニアリングの基本技術として、今後も重要であり続けるでしょう。

Tags

Chain of Thought プロンプトエンジニアリング CoT LLM
吉村 この記事の筆者

吉村

AI INSIGHT

大学でIT教育に20年携わり、わかりやすい解説に定評あり。現在は合同会社四次元にてAI初心者向けの入門コンテンツを担当。

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