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BERTとは?Googleが開発した「文脈を理解するAI」を解説
AI用語解説

BERTとは?Googleが開発した「文脈を理解するAI」を解説

2025-11-21
2025-12-10 更新

「彼は銀行に行った」——「銀行」は金融機関?川岸?BERTは文脈から正しい意味を理解できます。Google検索を一変させた革新的モデルの仕組みを解説します。

「彼は銀行に行った」と「川岸の銀行で釣りをした」——この2つの「銀行」の意味の違い、あなたはすぐに分かりますよね。

従来のAIには、これが非常に難しい課題でした。しかし、BERT(バート)の登場で、AIは文脈から単語の意味を理解できるようになりました。

この記事では、Googleが開発した革新的な言語モデル「BERT」について解説します。

BERTとは?

一言で言うと

BERTは、「文章を双方向から読む」ことで、単語の文脈を深く理解するAIモデルです。

正式名称は「Bidirectional Encoder Representations from Transformers」で、日本語では「Transformerによる双方向エンコード表現」と訳されます。

2018年にGoogleの研究者が発表し、自然言語処理の精度を大幅に向上させました。

読者
読者

「双方向から読む」ってどういうことですか?

吉村(AIコンサルタント)
吉村(AIコンサルタント)

従来のモデルは文章を「左から右」か「右から左」の一方向でしか読めませんでした。BERTは両方向から同時に読むことで、前後の文脈を総合的に理解できるんです。

なぜBERTが革新的だったのか

従来の言語モデル(Word2VecやELMoなど)には限界がありました。

例えば「Apple」という単語:

  • 「I ate an apple」→ 果物
  • 「I work at Apple」→ 企業

従来のモデルでは、どちらの「Apple」も同じベクトル(数値表現)になってしまいました。

BERTは文脈を理解するため、それぞれの「Apple」を異なるベクトルとして表現できます。

BERTの仕組み

Transformerベース

BERTはTransformerアーキテクチャの「エンコーダー」部分を使っています。

  1. 入力テキスト
  2. トークン化
  3. エンベディング(位置情報も含む)
  4. Transformerエンコーダー × 12層
  5. 文脈を考慮した表現ベクトル

事前学習の2つのタスク

BERTは大量のテキストで「事前学習」を行います。このとき、2つの特殊なタスクを使います。

1. マスク言語モデル(MLM)

文章の一部を「[MASK]」で隠し、その単語を予測させます。

入力: 「猫が [MASK] の上で寝ている」
予測: 「ソファ」「机」「布団」など

正解: 「ソファ」

これにより、BERTは前後の文脈から単語を推測する能力を獲得します。

マスク率

学習時には、文章の約15%の単語がマスクされます。そのうち80%は[MASK]に、10%はランダムな単語に、10%はそのままにします。

2. 次文予測(NSP)

2つの文が連続しているかどうかを予測させます。

文A: 「今日は天気がいい」
文B: 「散歩に行こう」
→ True(連続している)

文A: 「今日は天気がいい」
文B: 「バナナは黄色い」
→ False(連続していない)

これにより、文と文の関係性を理解する能力を獲得します。

BERTのモデルサイズ

モデル 層数 Attention頭数 パラメータ数
BERT-Base 12 12 1.1億
BERT-Large 24 16 3.4億

現在の大規模言語モデル(GPT-4は数千億パラメータ)と比べると小さいですが、2018年当時は革新的なサイズでした。

BERTの使い方:事前学習 + ファインチューニング

2段階のアプローチ

BERTの特徴的な使い方は「事前学習 + ファインチューニング」です。

  1. 事前学習:大量のテキストで汎用的な言語理解を学習
  2. ファインチューニング:少量のタスク固有データで調整
  3. 実用:感情分析、質問応答などの具体的タスクに適用
読者
読者

なぜ2段階なんですか?

吉村
吉村

事前学習で「言語の一般的な知識」を獲得しておくと、少量のデータでも高精度にタスクを解けるからです。ゼロから学習するより効率的なんです。

ファインチューニングの例

感情分析の場合:

  1. 事前学習済みBERTを用意
  2. 感情ラベル付きレビューデータ(数千件)で追加学習
  3. 「このレビューはポジティブ?ネガティブ?」を高精度で判定

この手法により、従来は大量のラベル付きデータが必要だったタスクが、少量のデータで実現可能になりました。

BERTの活用事例

Google検索

2019年、GoogleはBERTを検索アルゴリズムに導入。検索クエリの意図をより正確に理解できるようになりました。

例:「Can you get medicine for someone pharmacy」

  • 従来:「medicine」「pharmacy」のキーワードマッチ
  • BERT導入後:「他人の代わりに薬を受け取れるか」という意図を理解

質問応答システム

文章から質問に対する回答を抽出するタスクで高い性能を発揮。

文章: 「東京タワーは1958年に完成した。高さは333メートルである。」
質問: 「東京タワーの高さは?」
回答: 「333メートル」

感情分析

レビューやSNS投稿の感情(ポジティブ/ネガティブ/中立)を分類。

固有表現認識

文章から人名、地名、組織名などを自動抽出。

文書分類

ニュース記事のカテゴリ分類、メールの振り分けなど。

BERTの派生モデル

BERTの成功を受けて、多くの派生モデルが開発されました。

モデル 特徴 開発元
RoBERTa 学習方法を最適化 Meta
ALBERT パラメータ効率化 Google
DistilBERT 軽量化(60%のサイズ) Hugging Face
TinyBERT さらに軽量化(7.5倍小さい) Huawei
日本語BERT 日本語特化 東北大学他

BERT vs GPT

BERTとGPTは同じTransformerベースですが、設計思想が異なります。

項目 BERT GPT
構造 エンコーダーのみ デコーダーのみ
読み方 双方向 左から右(一方向)
主な用途 理解タスク(分類、抽出) 生成タスク(文章生成)
代表的モデル BERT、RoBERTa GPT-3、GPT-4、ChatGPT
吉村
吉村

BERTは「文章を理解する」のが得意で、GPTは「文章を生成する」のが得意。用途に応じて使い分けます。ただし、最近のLLMは両方の能力を兼ね備えています。

現在のBERTの位置づけ

ChatGPTClaudeのような大規模言語モデルが登場した現在でも、BERTは重要な役割を果たしています。

BERTが今も使われる理由

  1. 軽量:パラメータ数が少なく、推論が高速
  2. ファインチューニングしやすい:少量のデータで特定タスクに最適化可能
  3. コスト効率:API料金がかからない(オープンソース)
  4. オンプレミス運用:データを外部に出さずに利用可能

特定のNLPタスク(分類、抽出など)では、巨大なLLMよりBERTベースのモデルの方がコスト効率が良い場合があります。

まとめ:文脈理解AIの先駆者

BERTは、AIが言語の文脈を理解するための重要なマイルストーンでした。

BERTの重要ポイント:

  • 双方向から文章を読み、文脈を理解
  • Transformerのエンコーダーを使用
  • マスク言語モデル(MLM)と次文予測(NSP)で学習
  • 事前学習 + ファインチューニングのパラダイム確立
  • Google検索、質問応答、感情分析など幅広く活用
  • 軽量で特定タスクにはコスト効率が良い

BERTの登場は、GPTシリーズやGeminiなど、現在の大規模言語モデルへの道を開いた歴史的なブレイクスルーでした。

Tags

BERT Transformer 自然言語処理 Google
吉村 この記事の筆者

吉村

AI INSIGHT

大学でIT教育に20年携わり、わかりやすい解説に定評あり。現在は合同会社四次元にてAI初心者向けの入門コンテンツを担当。

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