「月末の経費精算チェックで残業が続く」「毎月の仕訳作業に追われている」「予算と実績が大きく乖離してしまう」——経理・財務担当者なら誰もが経験する悩みです。
しかし今、AIの活用によって経理・財務業務を劇的に効率化する企業が増えています。本記事では、経費精算・仕訳自動化・予算管理の3つの領域で、AIがどのように経理・財務を変革しているかを解説します。
経理・財務部門におけるAI活用の現状
グローバルで進むAI導入
経理・財務部門のAI活用は、急速に進んでいます。
PwCの調査によると、グローバルで83%の企業がすでに会計業務にAIを活用しています。また、Gartnerは2025年までに財務部門の自動化率が75%に達すると予測しています。
でも、うちみたいな中小企業でもAI導入のメリットはありますか?大企業向けの話じゃないですか?
実は中小企業こそメリットが大きいんです。少人数で業務を回している場合、AI導入による時間削減効果は絶大です。月額数千円から使えるクラウド型の会計AIサービスも増えていますよ。
日本の経理部門でのAI活用状況
国内でも経理DXへの投資が活発化しています。主な活用領域は以下の通りです:
| 領域 | 主な用途 |
|---|---|
| 経費精算 | 領収書読み取り、不正検知 |
| 仕訳 | 自動仕訳、勘定科目推定 |
| 請求書処理 | 請求書読み取り、照合 |
| 予算管理 | 需要予測、予実分析 |
| 監査 | 異常検知、リスク評価 |
| 決算 | 決算資料作成、レポート生成 |
経費精算のAI活用
従来の経費精算の課題
経費精算は、経理業務の中でも特に手間のかかる業務です。
- 領収書の手入力が大変
- 申請内容のチェックに時間がかかる
- 不正経費を見抜くのが難しい
- 月末に申請が集中して残業が発生
AI経費精算の仕組み
AI経費精算システムは、領収書を撮影するだけで、金額・日付・店名などを自動読み取りします。
主な機能:
- OCR(光学文字認識):領収書の文字を自動認識
- 自動仕訳:利用内容から勘定科目を推定
- ポリシーチェック:会社の規定に違反していないか自動確認
- 不正検知:不自然なパターンを検出してアラート
事例:freeeの経費精算AI
freeeは、AIを活用した経費精算機能を提供。領収書をスマホで撮影するだけで、金額・日付・取引先を自動入力。さらに、過去の仕訳履歴を学習して、適切な勘定科目を提案してくれます。
導入企業では、経費精算にかかる時間が70%以上削減されたという報告があります。
事例:SAP Concurの不正検知AI
SAP Concurは、AIを活用した経費不正検知機能を搭載。数百のルールとAI分析を組み合わせて、不正経費を自動検出します。
- 同じ領収書の二重申請
- 週末・深夜の不自然な利用
- 社内規定を超える金額
- パターンから外れる異常な申請
- 申請時間:80%以上削減
- チェック時間:50〜70%削減
- 入力ミス:大幅減少
- 不正検知率:向上
AIの読み取り精度ってどのくらいなんですか?結局人間がチェックしないといけないなら意味がないですよね…
最近のOCRは精度が格段に上がっています。きれいな領収書なら99%以上の精度で読み取れるものも。ただし、手書きの領収書や汚れた領収書は精度が落ちるので、最終確認は必要です。全部チェックするのではなく、AIが「自信がない」とフラグを立てたものだけ確認する運用がおすすめです。
仕訳自動化のAI活用
仕訳業務の課題
仕訳作業は、経理業務の中核でありながら、以下のような課題を抱えています:
- 取引量に比例して作業量が増大
- 勘定科目の判断に迷うケースがある
- 入力ミスのリスク
- 担当者の属人化
AI自動仕訳の仕組み
AI自動仕訳は、取引内容を分析して、適切な勘定科目と仕訳を自動生成します。
学習方法:
- 過去の仕訳データを学習
- 取引先、金額、摘要などのパターンを認識
- 新しい取引に対して最適な仕訳を予測
- 経理担当者の修正をフィードバックして精度向上
事例:マネーフォワードのAI自動仕訳
マネーフォワード クラウド会計は、AIを活用した自動仕訳機能を提供。銀行口座やクレジットカードと連携し、取引明細から勘定科目を自動推定します。
使えば使うほど学習が進み、推定精度が向上。導入企業では仕訳作業時間が50%以上削減されたケースも報告されています。
事例:弥生会計のAIアシスト
弥生会計も「スマート取引取込」機能でAIを活用。銀行明細やレシートを取り込むと、AIが取引内容を判断して自動仕訳してくれます。
特に、「●●商事」への振込は毎月「仕入高」など、定型的な仕訳パターンを学習することで、精度が向上していきます。
- 仕訳時間:50〜70%削減
- 入力ミス:大幅減少
- 属人化解消:誰でも同じ精度で処理可能
- 経理担当者の負荷軽減
請求書処理の自動化
請求書処理もAI化が進んでいます。
請求書をスキャンするだけで、金額・取引先・支払期日を自動抽出。照合作業や支払い処理の効率化に貢献しています。
国内では、Bill One(Sansan)、バクラク請求書(LayerX)などが代表的なサービスです。
予算管理・財務分析のAI活用
予算管理の課題
従来の予算管理には、以下のような課題があります:
- 過去実績ベースの予測で精度が低い
- 外部環境の変化を反映しにくい
- 予実差異の分析に時間がかかる
- シナリオ分析が大変
AI予算管理の仕組み
AI予算管理は、過去データだけでなく、外部データも取り込んで精度の高い予測を実現します。
分析に使用されるデータ:
- 過去の財務データ(売上、原価、経費)
- 季節変動パターン
- 経済指標(為替、金利、景気指数)
- 業界動向
- 自社のKPI
事例:Oracle EPM CloudのAI予測
Oracle EPM Cloudは、AIを活用した財務予測機能を提供。過去データと外部データを組み合わせて、売上・利益を予測します。
「もし為替が10%円安になったら」「もし原材料費が上がったら」といったシナリオ分析もAIが自動計算してくれます。
事例:財務データの異常検知
AIは、財務データの異常検知にも活用されています。
- 前年同期比で大きく変動した勘定科目を検出
- 不自然な取引パターンをアラート
- 月次推移から外れた異常値を検出
予測の精度が上がると、具体的にどんなメリットがありますか?
まず、キャッシュフロー管理が楽になります。入金・出金のタイミングを精度高く予測できれば、資金繰りの不安が減ります。また、経営判断のスピードも上がりますね。「今期の着地見込み」を迅速に出せれば、早めの軌道修正が可能になります。
監査・内部統制のAI活用
監査業務の効率化
監査業務にもAIが活用されています。
全件チェックが難しい取引データを、AIが自動でリスク評価。監査人は、リスクの高い取引に集中してチェックできます。
事例:Big4のAI監査ツール
PwC、デロイト、EY、KPMGなど大手監査法人は、独自のAI監査ツールを開発・導入しています。
- 全仕訳データの自動分析
- 異常取引の自動検出
- 監査手続きの自動化
- レポート作成の効率化
中小企業の場合も、クラウド会計ソフトに搭載された「仕訳チェック機能」でAI監査のメリットを享受できます。
- 全件チェックが可能(サンプリングではなく)
- 人間が見落とす異常パターンを検出
- 監査時間の短縮
- 監査品質の向上
AI導入の実践ステップ
ステップ1:業務の棚卸し
まずは経理・財務業務を整理し、AIで効率化できる領域を特定します。
- 経費精算のチェック → OCR + ポリシーチェックAI
- 仕訳作業 → 自動仕訳AI
- 請求書処理 → 請求書OCRAI
- 予算作成 → 予測AI
- 異常検知 → 監査AI
ステップ2:既存システムとの連携確認
AI導入前に、既存の会計システム、ERPとの連携可否を確認しましょう。
- API連携は可能か
- データのエクスポート/インポートは容易か
- 二重入力が発生しないか
ステップ3:スモールスタート
最初から全業務にAIを導入しようとせず、1つの業務から試験的に始めるのがおすすめです。
例:まず経費精算のOCRから始めて、効果を確認してから自動仕訳に拡大
ステップ4:精度のモニタリング
AI導入後は、定期的に精度をチェックしましょう。
- OCRの読み取り精度
- 自動仕訳の正答率
- 予測の精度
精度が低い場合は、学習データの追加やルールの調整を行います。
税務申告へのAI活用
税務計算の自動化
税務申告業務にもAIが活用されています。
- 消費税の税区分自動判定
- 法人税の別表自動作成
- 税制改正への自動対応
事例:クラウド会計の税務機能
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトは、仕訳データから自動で税務申告書を作成する機能を搭載。
特に消費税の仕入税額控除の計算は複雑ですが、AIが取引を分析して適切な税区分を判定してくれます。
AIに税務を任せて大丈夫ですか?間違えたら追徴課税になりますよね…
重要な指摘ですね。AIは「補助」として使い、最終的な税務判断は税理士に確認するのが鉄則です。特に判断が難しいケース(グレーゾーン)は、AIに任せきりにしないでください。
導入時の注意点
内部統制との整合性
AI導入にあたっては、内部統制との整合性を確認する必要があります。
- AIの処理は監査証跡として残るか
- 承認フローは維持されるか
- 職務分掌は守られるか
会計監査への対応
監査法人への説明も必要です。AIがどのように処理を行っているか、処理ロジックを説明できるようにしておきましょう。
- 処理ログは保存されるか
- 修正履歴は追跡できるか
- 承認権限は適切に設定されているか
- データのバックアップは十分か
- 監査法人に説明できるか
まとめ
経理・財務部門におけるAI活用は、経費精算・仕訳自動化・予算管理の3つの領域で大きな成果を上げています。
重要なのは、AIを「経理担当者の代替」ではなく「経理担当者の生産性を高めるツール」として活用することです。定型業務をAIに任せ、経理担当者は判断が必要な業務や経営への提言に時間を使う。この役割分担が、これからの経理・財務のスタンダードになっていくでしょう。
まずは経費精算のOCR機能から試してみてはいかがでしょうか。効果を実感してから、自動仕訳や予算管理へと展開していくのがおすすめです。
月末の経費精算チェックが一番大変なので、まずはそこから始めてみます。ありがとうございました!