GoogleのAI専用チップ『TPU』が注目を集めています。MetaがGoogleのTPU導入を検討するなど、NVIDIA一強に変化の兆し。第7世代『Ironwood』の驚異的な性能と、Gemini開発を支えるTPUの強みを解説します。
2025年11月末、GoogleのAI専用チップ「TPU」が急に脚光を浴びています。MetaがGoogleのTPUを自社データセンターに大規模導入を検討しているというニュースが報じられ、株式市場ではNVIDIA一強への対抗馬として注目されています。
本記事では、TPUとは何か、なぜ今注目されているのか、その技術的な強みと将来性を解説します。

TPUって最近よく聞きますけど、GPUとは違うんですか?

良い質問ですね!GPUはもともとグラフィック用に作られたものですが、TPUはAI処理専用に設計されたチップです。詳しく説明していきますね。
TPUは「Tensor Processing Unit(テンソル・プロセッシング・ユニット)」の略称です。GoogleがAIの処理に必要な行列演算を高速化するために開発した専用プロセッサで、2013年に初代モデルが発表されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Tensor Processing Unit |
| 開発元 | |
| 初代発表 | 2013年 |
| 最新世代 | 第7世代「Ironwood」(2025年) |
| 主な用途 | AI学習・推論処理 |
GPUも行列演算が得意ですが、TPUはグラフィック表示機能を持たず、AI処理のみに最適化されています。開発フレームワークとしてはGoogleのTensorFlowを使うことが基本となっています。
TPUが急に注目を集めた直接のきっかけは、米The Informationの報道です。2027年からMetaのデータセンターにGoogleのTPUを大規模に導入する検討が進んでいるとされています(Meta側は正式発表をしていません)。
現在、AI向けデータセンター用半導体ではNVIDIAが圧倒的なシェアを持っています。そのNVIDIA一強への対抗軸として、TPUに注目が集まったというわけです。

MetaがGoogleのチップを使うって、ライバル同士なのに変じゃないですか?

確かに面白い構図ですよね。でもAI開発には莫大な計算資源が必要なので、NVIDIAへの依存度を下げたいという思惑がどの企業にもあるんです。敵の敵は味方、みたいな関係ですね。
社内データで回答するAIチャットボット
Googleが初期からTPU開発で重視してきたのは「消費電力単位での能力(Watt Performance)」です。
第7世代「Ironwood」の性能データを見てみましょう。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 2018年モデル比の性能 | 3,600倍以上 |
| 初代比の電力効率 | 29倍 |
| 液冷導入 | 第3世代(2018年)から |
性能が3,600倍になったにもかかわらず、消費電力効率も29倍に向上しています。これは、AI開発において最大の課題である「電力の調達」に対する大きなアドバンテージです。
GoogleはTPU v3(2018年)から液体冷却を導入しました。Google DeepMindのチーフサイエンティスト、ジェフ・ディーン氏はこう説明しています。
> 「一つの転換点は、液体冷却をTPU v3で導入したことです。空気冷却ではなく、この種の液体冷却でより高密度の計算を実行できるようになりました」
液冷は今では珍しくありませんが、Googleが早い段階から「性能と消費電力のバランス」を重視していたことがわかります。
TPUの真の価値は、半導体単体ではなく、それを活用するためのソフトウェアエコシステムにあります。
ディーン氏によると、Googleは2016年以来、複数のTPUを統合的に扱えるインフラ「Pathway」を開発してきました。オープンソースのJaxと統合することで、1つのプロセスから1個のTPUでも1万個のTPUでも同じように扱えるようになっています。
この仕組みがGemini 3の学習効率化に大きく貢献しています。

TPUがあるからGeminiが賢くなったということですか?

その通りです!TPUという優れたハードウェアと、それを効率的に使うソフトウェア基盤があるからこそ、Gemini 3のような高性能AIを効率的に学習できるんです。
重要な点として、GoogleはNVIDIAと敵対しようとしているわけではありません。
TPUとNVIDIAのGPUでは得意な処理が異なるため、Google自身もGoogle Cloudの顧客にも、NVIDIAのGPUを提供しています。2025年4月の「Google Cloud NEXT 25」では、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOがサインしたNVIDIA GPUサーバーが展示されていました。
両方を使い分けることで、より柔軟なAI開発環境を提供しているのです。

Googleが強いとされる理由は、総合力にあります。
OpenAIがNVIDIAのGPUに依存しているのに対し、GoogleはAI開発に必要な要素を垂直統合で揃えています。さらにChrome事業売却も回避できたことで、検索からブラウザまでのエコシステムを維持しています。

じゃあGoogleが最強ってことですか?

総合力では確かに強いですが、ChatGPTのブランド力はまだ圧倒的です。Googleも広告投資を強化してGeminiの認知度向上に注力しています。勝負はまだこれからですね。
GoogleのTPUは、AI処理に特化した専用チップとして12年以上の開発実績があります。
TPUのポイント:
AI投資が加速する中、Googleの垂直統合モデルは長期的な競争優位性を持つ可能性があります。TPUの動向は、今後のAI業界の勢力図を左右する重要な要素として注目していく価値があるでしょう。
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