RAGとは?仕組みからビジネス活用まで初心者向けにわかりやすく解説
技術解説 2025.11.30

RAGとは?仕組みからビジネス活用まで初心者向けにわかりやすく解説

Kanzaki
Author

RAG(検索拡張生成)の仕組みとメリットを初心者向けに解説。ChatGPTなどの生成AIの弱点を補い、社内情報を活用したAIを構築する方法をわかりやすく説明します。

「RAGって最近よく聞くけど、何のこと?」

「ChatGPTをもっと賢く使いたいけど、どうすればいい?」

このような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。

RAG(ラグ)は、生成AIの精度を飛躍的に向上させる技術として注目を集めています。本記事では、RAGの仕組みからビジネス活用まで、初心者向けにわかりやすく解説します。

RAGとは?

RAGの概要

RAGとは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれます。

一言で説明すると、「生成AIが回答を作る前に、外部の情報を検索して参照する」という仕組みです。

オープンブック試験に例えると

RAGの仕組みは「オープンブック試験(教科書持ち込みOKのテスト)」に例えられます。

  • 従来の生成AI:記憶だけで回答する(クローズドブック試験)
  • RAGを使った生成AI:教科書を見ながら回答する(オープンブック試験)

教科書を見ながら回答できれば、より正確な答えが出せますよね。RAGもまさにその原理です。

読者
読者

でも、ChatGPTはインターネットの情報を学習しているから、すでに色々知っているんじゃないですか?

AIアドバイザー
AIアドバイザー

確かにそうですが、ChatGPTには「知らないこと」や「古い情報」という弱点があるんです。RAGはその弱点を補う技術なんですよ。

なぜRAGが注目されているのか?

RAGが注目される理由

RAGが注目される理由は、生成AI(LLM)が抱える3つの課題を解決できるからです。

課題1:知らないことには答えられない

ChatGPTなどの生成AIは、学習していない情報には答えられません。

答えられない情報の例:

  • 社内の業務マニュアルや規程
  • 自社製品の詳細な仕様書
  • 地域限定のローカルな情報
  • 業界特有の専門知識

課題2:古い情報への依存

生成AIには「ナレッジカットオフ」という学習データの最終更新日があります。それ以降の出来事は知りません。

例えば、ChatGPTに「現在の日本の総理大臣は?」と聞いても、学習データが古ければ誤った回答が返ってきます。

課題3:ハルシネーション(幻覚)

生成AIは、知らないことでも「もっともらしい回答」を作ってしまうことがあります。これをハルシネーション(幻覚)と呼びます。

ハルシネーションの例:

  • 存在しない論文を引用する
  • 架空の時刻表を回答する
  • 実在しない製品仕様を説明する

RAGを使えば、信頼できる外部情報を参照するため、これらの課題を大幅に軽減できます。

RAGの仕組み

RAGの仕組み

RAGの仕組みは、大きく3つのステップで構成されています。

ステップ1:Retrieve(検索)

ユーザーの質問に関連する情報を、外部のデータベースから検索して取得します。

検索対象の例:

  • 社内文書データベース
  • FAQデータベース
  • 製品マニュアル
  • Webページ

ステップ2:Augment(拡張)

取得した情報をユーザーの質問と組み合わせて、生成AIへの入力(プロンプト)を作成します。

プロンプトの構成:

  • 「以下の情報を参考に回答してください」
  • 取得した関連情報(Context)
  • ユーザーの質問

ステップ3:Generate(生成)

拡張されたプロンプトをもとに、生成AIが回答を作成します。

読者
読者

なんだか複雑そうですね…

AIアドバイザー
AIアドバイザー

ユーザー側から見れば、普通にチャットで質問するだけです。裏側でRAGが自動的に情報を検索してくれるので、より正確な回答が返ってくるという仕組みですよ。

具体例:電車の時刻表

例えば「品川駅から名古屋駅に12時に着きたい。何時発の新幹線に乗ればいい?」という質問。

RAGなしの場合:

→ 学習データにない時刻表なので、架空の時刻を回答してしまう

RAGありの場合:

→ 最新の時刻表データベースを検索し、正確な発車時刻を回答

RAGとファインチューニングの違い

RAGとファインチューニング

生成AIに新しい知識を与える方法として、RAGの他に「ファインチューニング」があります。

ファインチューニングとは

ファインチューニングは、生成AIに追加のデータを学習させて、AIそのものを強化する方法です。

比較表

項目 RAG ファインチューニング
仕組み 外部情報を検索して参照 AIに追加学習させる
導入コスト 低い 高い
情報の更新 簡単(データベース更新のみ) 困難(再学習が必要)
必要な設備 通常のサーバー 高性能GPU
専門知識 比較的少ない 機械学習の専門知識が必要

RAGが選ばれる理由

ファインチューニングには以下のような高いハードルがあります。

  • 高性能なGPUが必要(普通のPCでは不可能)
  • 大量のデータが必要(数十万件以上)
  • 機械学習の専門知識が必要
  • AIが指示に従わなくなるリスク

RAGなら、これらの壁をすべて回避できます。LLMを学習させず、外部情報を検索させるだけだからです。

合同会社四次元 RAGを活用したAIチャットボット導入支援

RAGのメリット

RAGのメリット

RAGを導入することで得られるメリットを詳しく解説します。

1. 回答の信頼性・正確性が向上

信頼できる外部情報を参照するため、ハルシネーションを大幅に減らせます。ファクトチェックにかかる時間も短縮できます。

2. 情報の更新が簡単

RAGでは、外部データベースを更新するだけで最新情報を反映できます。ファインチューニングのような再学習は不要です。

3. 費用対効果が高い

ファインチューニングと比較して、導入・運用コストを大幅に抑えられます。

4. 社内情報の活用が可能

業務マニュアル、FAQ、製品仕様書など、社内にある非公開情報をAIに活用させることができます。

RAGのビジネス活用事例

RAGの活用事例

RAGは様々なビジネスシーンで活用されています。

1. 社内FAQチャットボット

社内規程や業務マニュアルをRAGのデータベースに登録し、従業員からの問い合わせに自動対応。

効果:

  • 総務・人事部門の問い合わせ対応を削減
  • 24時間対応が可能に
  • 回答品質の均一化

2. カスタマーサポート

製品マニュアルやFAQをRAGで参照し、顧客からの問い合わせに正確に回答。

効果:

  • オペレーターの対応時間を短縮
  • 回答精度の向上
  • 対応漏れの防止

3. 営業支援

製品情報、価格表、競合比較資料をRAGで参照し、営業担当者の質問に即座に回答。

効果:

  • 商談準備時間の短縮
  • 提案品質の向上
  • 新人営業の早期戦力化

導入事例:自治体のゴミ分別案内

大阪府守口市では、ゴミ分別の問い合わせにRAGを活用したチャットボットを導入。人が対応する電話相談の件数が約15%減少し、時間外や土日も対応可能になりました。

RAG導入の注意点

RAGの注意点

RAGは万能ではありません。導入時に押さえておくべき注意点を解説します。

1. 外部情報の品質に依存する

RAGの回答品質は、参照する外部情報の品質に大きく左右されます。

対策:

  • 外部情報の定期的なファクトチェック
  • 情報の更新・メンテナンス体制の構築
AIアドバイザー
AIアドバイザー

「ゴミを入れればゴミが出てくる」というデータサイエンスの格言があります。RAGでも、良質なデータを用意することが成功の鍵です。

2. 機密情報の取り扱いに注意

RAGは外部情報をすべて検索対象にするため、機密情報が意図せず回答に含まれる可能性があります。

対策:

  • 機密レベルに応じたアクセス制限
  • データベースへの登録内容の精査

3. 検索精度のチューニングが必要

質問に対して適切な情報が検索されないと、回答品質が低下します。

対策:

  • ベクトル検索とキーワード検索の組み合わせ(ハイブリッド検索)
  • 検索精度の継続的な改善

4. 独自コンテンツの生成は苦手

RAGは外部情報を参照して回答するため、外部情報にない独自のアイデアを生み出すことは苦手です。

対策:

  • RAGに任せる部分と人が担当する部分を明確に分ける

RAGの検索方式

検索方式

RAGで用いられる主な検索方式を紹介します。

ベクトル検索

単語の「意味」を数値化(ベクトル化)して、類似度で情報を検索する方式です。

メリット:

  • 言い回しが違っても類似の意味を見つけられる
  • 「同義語」や「言い換え」に強い

デメリット:

  • 開発コストが高い

キーワード検索

単語や文字列のパターンを照合して検索する方式です。

メリット:

  • シンプルで実装しやすい
  • 固有名詞や専門用語に強い

デメリット:

  • データ量が増えると検索速度が低下

ハイブリッド検索

ベクトル検索とキーワード検索を組み合わせた方式です。それぞれの弱点を補い合えるため、多くの場合はハイブリッド検索が推奨されています。

まとめ

RAGの特徴をまとめると以下の通りです。

項目 内容
正式名称 Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)
仕組み 外部情報を検索してAIの回答を補強
解決する課題 知識不足、古い情報、ハルシネーション
メリット 高精度、低コスト、更新が簡単
主な用途 社内FAQ、カスタマーサポート、営業支援

RAGは、生成AIをビジネスで実用的に活用するための重要な技術です。社内情報を活用した高精度なAIチャットボットを構築したい場合は、RAGの導入を検討してみてください。